第04話-5

ロディの行く手に立ちふさがる罠は、非常にたくさんあった

機雷・・また機雷・・黒いギアの群れが出てきて、また機雷・・


「海戦ゲームじゃねぇんだぞ!?」


ロディはデストロイとドーマの事をほっぽって、すでに単独第一位

しかし・・先ほどからおかしい事が一つだけある事に気が付いた


・・なんだ、あいつ・・どうしてついて来てるんだ・・?


依然としてパーフェクト・ゼファーの背後にぴったりくっついているのは二位のシガラキのギア

・・どう見ても、一般的な作業用ギアなのだが・・


「・・まぁいい・・俺を抜けるモンなら抜いてみなッ!!」


すでにゴールしか見えていないのか、ロディはなおもサイシステムを臨界寸前にまでアップさせた

・・事実、もうゴールは見えているのだが・・


超大型戦艦、最新鋭の技術を組み込まれた試作型戦艦「グレイオン」

S.Gの・・リィズ達の特務第8小隊とは違う実験小隊が所持する戦艦だ


・・今回のために艦全体がパーティ仕様になっていて、優勝者を出迎えるという手はず・・


・・しかし、このとき・・なぜか、メインエンジンが起動していた


・・艦内からは出迎えの歓声が聞こえてもいいはずなのだが、一切通信も入ってこない


「うおぉぉぉぉぉ!!!」


バーニアとブースターを最大噴射し、ゼファーはまさに矢のごとき速度でグレイオンに突っ込んでいく!


・・すると・・


う゛ぃしゅぅぅぅ・・ん


ビームの光が、数秒前までゼファーのいた位置を通り過ぎた


「発砲してきやがった・・!?」

「そんなバカな!・・グレイオンは障害物ではなく、ただのゴール地点ですよ・・・?」


ネスはそう言って解説を見せてくれるが、ロディは苦笑いしながら通信を切った


「上等だ・・邪魔すんならなんでも叩ききって・・・」


どぅ・・んっ!!


「ぐわぁぁぁっ!?」


背後から突然の攻撃・・

ゼファーの背中の戦闘機が壊れて、爆発してしまった


「ぱ、パーフェクトブースターが!?」


悪趣味なその名を呼ぶが・・壊れたパーツはゼファーから離れて、再びスタート時の状態に戻されてしまった


「てめぇか!?」


シガラキのギア・・・


「マスター!それのパイロット・・S.Gの開発した「AI」です!!」

「AI!?・・参加条件は「人間が搭乗していること」だろうが!!」

「機体もそのAIも、数日前に強奪されて行方不明になっているものなんです!!」

「あ?・・・えと・どういうことだ?」

「こういうことだ!!」


突然の大声とともに、ゼファーを再び衝撃が襲った

左腕で攻撃を防ぐが・・その腕が、肩から一気に持って行かれてしまう

さ・・サイモードを上回る機動力・・?


「てめぇみたいな旧式野郎に、そうそう遅れをとっていられるかってんだよ」

「まさか・・お前ら!?」

「セルムラントでは世話になったな!・・俺たちは自慢じゃないが恨みがましいぜ・・覚悟しろよ?」


・・テロリスト集団・・

前回のセルムラント攻防戦で戦い、さくっと決着をつけてしまった連中・・

彼らは脱獄後このレースへのユニオンの参加を知り、グレイオンを密かに乗っ取り待っていたのだ。

・・しかし、前回と違い今回はロディにとってヤバイ状況だ


・・サイシステムが臨界・・ダメだ、もうそろそろ俺がヤバイ・・


ロディの精神力(根性)は限界寸前、システムを切るしかない。

しかし、そうすればヤツの機動力に勝ち目はない


「・・って、俺はレースをやってるんだ!!邪魔すんじゃねぇ!!」

「邪魔?・・違うな、俺たちはお前を消すために脱獄してきたんだ!ローディス=スタンフォード!!」


グレイオンの主砲が、ゼファーを捉え・・勢いよく伸びる青い光を放った


「フィールド最大展開!・・乗り切れ相棒ッ!!!」


しかし・・無情にもゼファーの目が、青から緑に戻っていく

・・度重なるエネルギー消費による出力限界で、ついにサイモードが自動的に解除されてしまった・・

サイモードの解除、それはつまり、展開しているプラズマフィールドが、ただのプラズマフィールドに戻ることを意味する


「うぁっ・・・・!?」


ロディの視界を、青いエネルギーの流れが埋め尽くす

ゼファーの全身が、その流れに直にさらされる

・・表面から装甲が削り取られていく

・・腕が、足が・・ゼファーを構成するもの全てが少しずつ溶けて、崩れて、崩壊していく


「マスターっ!?」

「お兄ちゃん・・!!」


きいぃぃぃぃ・・・・


ロディの声はなく・・ゼファーの最後の咆吼だけが、通信からは帰ってきた・・

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グレイオン艦内・・

そのブリッジを占拠していたテロリストたちは、思いっきり喜んでいた


ゼファーは数秒の後に爆発し、メインフレームの残骸が浮かんでいるだけになった

艦を衝撃が襲ったが・・もちろん、そんなものは微々たるもので・・


「俺たちが本気を出せばてめぇなんてお呼びじゃねぇんだよ!!」

「思い知ったかトラコン野郎が!」


口々にロディをけなし、笑っている


「さぁて、じゃあ次は残りのユニオンのギアだな」


そう、メンバーの一人がつぶやいた時だった


「おい」

「あ?・・・なんだ?」

「・・あの刺さってるヤツは・・なんだ?」


ブリッジから見える外壁・・・そこには、ギアの背中のパーツらしきものが刺さっている


「さっき飛んできたヤツだろ?」

「・・ご名答」


全員が聞き覚えのあるその声に、一斉にブリッジの出入り口を振り返る


・・ローディス=スタンフォード・・


「てめぇ!?・・い、生きてたのか!?」

「ったりめーよ・・成功率100%は伊達じゃねェんだからな」


ロディは両手に、巨大なランチャーを構えている

テロリストたちはもちろんロディに銃を向けたが・・


「・・やめておけ、今俺は最高に気分が悪い」


ヒビの入った眼鏡の下からは、想像もつかないほどの殺気が向けられている

その殺気は、サイシステムにより精神力を浪費しているとは思えないほど、はっきりしていた


「ま、仮にも相棒のパーツ(背部コア)と一緒にゴールしたんだ・・文句はないな、司会者?」

「え・・?・・え、ええまぁ・・基本ルールにも「ギアに乗って、たどり着けばよしって・・」


先ほどから状況が飲み込めていないらしいアリスは、やや戸惑いながら答えた


「・・優勝おめでとうってな・・だけどよ、よくも俺の相棒をあんなにしてくれやがったなぁ?」

「・・まさか・・!?」

「ぶ、ブリッジでそんなモンを撃つ気か!?」

「へっ・・・見りゃわかるだろーがッ!!!

グレイオンのブリッジは爆発し・・使い物にならなくなってしまった。

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・・ところで・・


「・・なんか大変なことになってるみたいだね・・」

「・・とは言っても・・はるか彼方のお話ですよ」


ドーマとデストロイは、まだまだゴールにはほど遠かった


・・そして、テロリストにゴールが占拠されていたとかあったにも関わらず・・


ユニバーサルランナーの優勝はロディ、レースは続行されていたのだった。


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